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『マイホーム山谷』を通して考える、山谷のホスピスケアと福祉の課題とは?『マイホーム山谷』が描く、山谷の地域ケアシステムの光と影

東京・山谷。貧困と高齢化が進むこの街で、在宅ホスピスケア施設「きぼうのいえ」を運営する山本夫妻。余命僅かな人々に寄り添い、最期の時まで“家族”のような温かさを提供する。しかし、その理想は、生活保護、赤字、そして妻の失踪という現実によって揺らぐ。第28回小学館ノンフィクション大賞受賞作『マイホーム山谷』は、介護と福祉の光と影、そして山谷の独自のケアシステムの現状を鮮烈に描き出す、魂を揺さぶるノンフィクション。

『マイホーム山谷』を通して考える、山谷のホスピスケアと福祉の課題とは?『マイホーム山谷』が描く、山谷の地域ケアシステムの光と影

📘 この記事で分かる事!

💡 山谷の在宅ホスピス『きぼうのいえ』の設立と、そこで行われるスピリチュアルケアの重要性。

💡 『マイホーム山谷』が描く、山本夫妻の理想と現実のギャップ、そして美恵さんの失踪という出来事。

💡 山谷の地域ケアシステムの現状、脆弱さと、そこから見える福祉の課題。

それでは、山谷のホスピスケアの現状と課題について、具体的に見ていきましょう。

山谷の変容と『きぼうのいえ』の誕生

山谷地区に生まれた゛きぼうのいえ゛は何を提供している?

在宅ホスピスケア

この章では、山谷という場所と、そこに生まれた「きぼうのいえ」の物語に迫ります。

ドヤ街「山谷」でホームレスに寄り添い14年「きぼうのいえ」の山本雅基さんが語るホスピス社会クリスチャントゥデイ
ドヤ街「山谷」でホームレスに寄り添い14年「きぼうのいえ」の山本雅基さんが語るホスピス社会クリスチャントゥデイ

✅ 「きぼうのいえ」は、山谷のホームレスのための在宅ホスピス対応の集合住宅で、入居者のスピリチュアルなケアにも力を入れている。

✅ 山本さんは、入居者との関係を「もう一人の自分」になるほどに深め、無条件の愛で入居者の心を癒し、最期まで寄り添うことで、入居者は自分の人生を恨まずに亡くなる。

✅ 山本さんは「きぼうのいえ」は「愛の修行道場」であり、入居者のスピリチュアルなケアこそがホスピスに必要なものだと訴え、将来的には「山谷がホスピスになり、東京がホスピスになり、地球がホスピスになる」という大きな夢を語った。

さらに読む ⇒クリスチャントゥデイ:キリスト教ニュース出典/画像元: https://www.christiantoday.co.jp/articles/16475/20150708/hospice-kibounoie-yamamoto-masaki.htm

無条件の愛で接する山本さんの姿勢は素晴らしいですね。

スピリチュアルケアの重要性も理解できますが、運営の厳しさを考えると、現実とのギャップを感じます。

東京都山谷地区は、江戸時代から続く寄せ場であり、貧困層や労働者が多く住む地域でした。

近年は日雇い労働市場の縮小や高齢化により、簡易宿所が廃業し、マンションが建ち並ぶ一方で、生活保護受給率は東京都全体の平均を大きく上回り、゛福祉の街゛となっています。

そんな山谷地区に誕生したのが、在宅ホスピスケア対応型集合住宅「きぼうのいえ」です。

施設長の山本雅基さん夫妻が立ち上げた「きぼうのいえ」は、余命が限られ、経済的に困窮し、身寄りのない人々に、在宅ホスピスケアを提供しています

入居者は福祉事務所や病院の医療ソーシャルワーカーから紹介され、路上生活の経験者だけでなく、かつて自宅があった人たちもいます。

「きぼうのいえ」では、スタッフが日夜介護にあたることで、入居者が亡くなる前に家族や友達といった人間関係を築き、愛や心のふれあいの温かさを実感できるように努めています。

しかし、運営費は入居者の生活保護費から充当されており、常に赤字の状態です。

スタッフは、介護に加えて家族の役割も担っており、非常に困難な状況に置かれています。

「きぼうのいえ」は、山谷地区という特殊な環境の中で、在宅ホスピスケアの新たなモデルを提示しています。

経済的な困窮や家族の不在など、様々な困難を抱える人々にとって、最後の砦となる存在です。

なるほど、スピリチュアルケアは重要だ。しかし、ビジネスとして考えると、常に赤字というのは問題だな。どこか資金調達の方法を考えないといけない。

山本夫妻の軌跡と「きぼうのいえ」の現状

「マイホーム山谷」の山本夫妻に起きた悲劇とは?

美恵さんの失踪と山本さんの解任

この章では、山本夫妻の理想と現実、そして山谷のケアシステムの現状に迫ります。

著者インタビュー】末並俊司『マイホーム山谷』/ドヤ街のホスピス「きぼうのいえ」創設者の波瀾の人生

公開日:2022/05/17

著者インタビュー】末並俊司『マイホーム山谷』/ドヤ街のホスピス「きぼうのいえ」創設者の波瀾の人生

✅ 山谷のホスピス「きぼうのいえ」の創設者である山本雅基・美恵夫妻の、理想のケアを追い求めた栄光と挫折を描いたノンフィクション作品。

✅ 山本夫妻は、山谷という街の特性を生かし、独自の支援体制「山谷版・地域包括ケアシステム」を構築しようと、ホスピス「きぼうのいえ」を設立。

✅ しかし、彼らの理想は、美恵さんの失踪や山本さんの精神疾患など、様々な困難に見舞われ、現実とのギャップに直面する。

さらに読む ⇒小学館の小説ポータルサイト小説丸出典/画像元: https://shosetsu-maru.com/recommended/book-review-959

山本夫妻の理想と現実のギャップ、そして美恵さんの失踪…何か深い事情がありそうですね。

介護や福祉の現場は、本当に難しい問題がたくさんありますね。

『マイホーム山谷』は、山本雅基氏とその妻・美恵さんの物語を描いたノンフィクション作品です。

山本夫妻は、生活困窮者や病気を持つ人々を受け入れ、最期まで寄り添うケアを提供していました。

しかし、美恵さんは『プロフェッショナル仕事の流儀』放送後に失踪し、山本さんは『きぼうのいえ』の理事長を解任され、現在では生活保護を受給しながらひとり暮らしをしています。

本書は、山本夫妻の栄光と挫折、そして山谷における「理想のケア」の危うさを描き、介護や福祉の現状を浮き彫りにしています

山本さんの奥さんの失踪ってやつは、ミステリードラマみたいで気になるね。理想と現実のギャップってのは、どんな世界でもある話だけど、この場合は重みが違う。

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山谷の福祉を支える人々の姿を描くノンフィクション。賞賛と課題、そして揺れ動く現実… 著者が10年以上の歳月をかけ、その奥深くに迫る。