日本の対外純資産:増加は続くものの、その実態は複雑化?世界最大の対外純資産国とは!?
💡 円安の影響で資産価格が変動し、対外純資産が大きく増えている
💡 直接投資の比率が上昇し、証券投資よりも大きくなっている
💡 世界における日本の対外純資産の状況と今後の展望について解説します
それでは、日本の対外純資産について詳しく見ていきましょう。
日本の対外純資産:増加は続くものの、その実態は複雑化
本章では、日本の対外純資産の現状について詳しく見ていきましょう。
✅ 日本の対外純資産残高は、円安の影響により価格変動が大きく、対外証券投資残高は減少傾向にある一方で、直接投資比率が過去最大に達したことが明らかになりました。
✅ 対外証券投資ではリスクオフムードの高まりに応じてレパトリ(本国回帰)が期待されるものの、対外直接投資はそうはいきません。投資家が海外有価証券を売る(外貨売り・円買いする)ことはあっても、事業法人が買収した海外企業を売るには相応の議論と時間を要するからです。
✅ 直接投資収益において再投資比率が上昇傾向にあることから、今後も「証券投資より直接投資」という傾向は続き、直接投資収益をわざわざ日本に戻す意味は薄れていく可能性があると考えられます。
さらに読む ⇒日経COMEMO|日経COMEMO公式出典/画像元: https://comemo.nikkei.com/n/n86236a4f1434円安の影響がここまで大きいとは、驚きですね。
日本の対外純資産は2022年末時点で418兆6285億円と、5年連続の増加を記録し、32年連続で「世界最大の対外純資産国」のステータスを維持しました。
しかし、円安にもかかわらず、残高増加は7200億円程度にとどまり、これは対外証券投資の価格変動が大きく特に株式市場・債券市場の下落が影響したためです。
注目すべきは、対外純資産残高における直接投資の比率が54.6%と過去最高を更新したこと、一方の証券投資は17.5%と過去最低水準となったことです。
この直接投資の増加傾向は、国内の投資機会の乏しさや、海外における成長機会の期待を反映しており、円安が構造的な問題である可能性を示唆しています。
直接投資は、短期的には円買い需要を生み出しにくいことから、今後円安が加速する可能性も懸念されます。
また、直接投資の収益率上昇傾向も、円安を助長する可能性があります。
これらの要因は、日本の対外純資産の現状を複雑化しており、今後の円安動向や日本経済への影響に注目が必要です。
確かに、直接投資の増加は、円安を加速させる可能性がありますね。長期的な視点で、慎重に考えていく必要があると思います。
対外直接投資の拡大:日本経済への貢献と課題
続いて、対外直接投資の拡大についてお話します。
✅ 日本の対外純資産の54.6%を占める対外直接投資は、2022年末時点で228.6兆円に達し、アメリカ、オランダ、中国、英国、シンガポールがトップ5にランクインしています。
✅ 対外直接投資は非製造業が製造業を上回り、特に金融・保険分野で顕著な伸びを見せています。
✅ 対外直接投資のリターンは2022年で10.84%と試算され、近年は証券投資収支を上回る黒字を記録しており、日本の国際収支における重要な役割を果たしています。
さらに読む ⇒第一生命経済研究所TOPページ出典/画像元: https://www.dlri.co.jp/report/macro/255725.htmlアメリカの直接投資額が大きいのは、やはり世界の経済の中心だからでしょうか?。
日本の対外純資産は世界最大で、2022年末時点で418.6兆円に達しており、そのうち54.6%にあたる228.6兆円が直接投資残高です。
近年、対外直接投資は順調に拡大しており、2014年には証券投資残高を上回り、2017年には外貨準備残高をも上回り、対外純資産のトップ位置を占めています。
対外直接投資の地域別残高では、アメリカが90兆703億円と断トツのトップで、続くオランダ、中国、英国、シンガポールなどと共に上位を占めています。
2015年以降、シンガポールの伸びが顕著で、企業活動のしやすさ、地理的な位置などの要因から投資が集まっていると考えられます。
業種別に見ると、非製造業が製造業を圧倒しており、2022年末時点で62.2%を占めています。
非製造業では、金融・保険が最大の業種となっています。
対外直接投資は、日本の国際収支統計において所得収支の黒字拡大に貢献しており、経常収支の安定に寄与しています。
一方で、対内直接投資は、政府の対日投資拡大キャンペーンにもかかわらず、緩やかな伸びとなっています。
ただし、最近では、経済安全保障、サプライチェーン強化の観点から、日本への投資が拡大する動きが見られます。
2022年の対外直接投資リターンは、10.84%と試算され、時価ベースでは10.66%となっています。
金融・保険分野って、直接投資するの?難しいイメージがあるんだけど。
対外純資産の増加:円安と国内投資環境への影響
では、対外純資産の増加が日本の経済にどう影響するか、解説していきます。
公開日:2023/05/30
✅ 日本の対外純資産は5年連続で増加し、32年連続で世界最大の対外純資産国となっています。しかし、その増加要因は円安による資産価格変動が大きく、対外証券投資残高は減少傾向にあります。
✅ 対外純資産残高に占める直接投資の割合が上昇し、証券投資を上回っています。これは、日本企業が海外に直接投資する傾向が強まっていることを示しており、円安が構造的な問題として認識されるようになりました。
✅ 直接投資の増加は、円安が長期化する要因の一つと考えられます。直接投資は、収益の再投資などを通じて円買い需要を生み出しにくいため、円安を加速させる可能性があります。
さらに読む ⇒Business Insider Japan|ビジネス インサイダー ジャパン出典/画像元: https://www.businessinsider.jp/post-270509国内投資環境の乏しさ、確かに感じますね。
日本の対外純資産は、2023年末時点で471兆3061億円と5年連続で過去最大を更新し、33年連続で世界最大の対外純資産国となりました。
資産残高の増加要因は、円安の影響による為替相場の変動が最も大きく、それ以外では資産価格の変動と取引フローが影響しています。
しかし、対外純資産の増加は、必ずしも円買い圧力につながるわけではありません。
近年、直接投資が証券投資を上回り、その収益は海外再投資に回っているためです。
これにより、かつてのようにリスク回避時の円買い需要が期待できなくなり、円安が進行しています。
また、日本企業の海外内部留保残高は、投資機会の不足を反映し、増加を続けています。
日本の対外純資産は、世界最大の対外純資産国というステータスを維持していますが、その実態は、国内投資環境の乏しさや円安圧力の増大を示唆していると言えるでしょう。
円安は、日本にとってプラス面もあるけど、マイナス面もあるから難しい問題だな。
日本は世界最大の純債権国:国際的な比較
次に、日本の対外純資産を世界と比べてみましょう。
✅ 2021年のIMFデータに基づき、175か国における対外純資産額を分析した結果、日本が世界最大の対外純資産保有国であることが明らかになりました。
✅ 対外純資産とは、一国が他国に対して保有する資産と負債の差額であり、日本はドイツ、香港、中国に続いて上位にランクインしています。
✅ 一方、アメリカ合衆国は世界最大の対外純負債を抱えており、スペイン、フランス、アイルランド、イギリスなどがそれに続きます。対外純資産は、公的および民間の資産と負債を合算したもので、個々の国の財政状態を概観する参考資料として役立ちます。
さらに読む ⇒Yahoo!ニュース出典/画像元: https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/31b149855efd61967f84b315c29ed0a99b5b9d83アメリカが世界最大の対外純負債を抱えているのは、やはり消費大国だからでしょうか?。
日本の対外純資産は2023年末時点で471兆3061億円となり、5年連続で過去最高を更新しました。
円安による外貨建て資産の円換算での評価額上昇が主な要因です。
対外資産は15年連続で増加し、1488兆3425億円となりました。
対外負債も5年連続で増加し、1017兆364億円となりました。
日本は33年連続で世界最大の純債権国であり、対外純資産はドイツ、中国、香港に次いで世界で4番目に大きくなりました。
米国は世界最大の純債務国です。
なるほど、アメリカは純負債国、日本は純債権国。対照的ですね。
今後の展望:対日投資とアジア地域への進出
では、日本の対外純資産の将来について考えます。
✅ 2021年上半期の日本の対外直接投資は前年同期比37.4%増と大幅に増加し、そのうちアジア大洋州地域への投資は33.3%を占めました。特に、ASEANへの投資は67.1%増の2兆2,222億円と大きく伸び、中国向けの4倍以上となりました。
✅ 長期的な傾向としては、2014年から2020年にかけて日本の対外直接投資残高はAPAC地域が最も大きく増加しており、特にASEANへの投資は大幅に伸びている一方で、中国への投資はあまり伸びていません。
✅ 日本企業は、ASEAN地域を生産拠点として強化する動きを強めており、その背景にはサプライチェーンの多様化や気候変動対策への意識の高まりなどが挙げられます。具体的には、再生可能エネルギー事業など、環境配慮型の投資が増加しています。
さらに読む ⇒ジェトロ(日本貿易振興機構)出典/画像元: https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/3a35743af3c0aadb.htmlサプライチェーンの多様化は、今後の経済活動において重要な課題ですね。
今後の注目点は、サプライチェーン強化を背景とした対日投資の拡大、そして、アジア地域における対外直接投資の更なる発展です。
日本政府は、官民連携を強化し、競争力を高めることで、これらの好機を逃さないようにしていく必要があります。
海外に投資するって、よくわからないけど、将来どうなるのかな?
本日は、日本の対外純資産についてお話しました。
今後の動向に注目していきましょう。
💡 日本の対外純資産は増加傾向にあるが、円安の影響が大きく、その実態は複雑化している
💡 対外直接投資は拡大しており、特にアジア地域への投資が活発化している
💡 日本の対外純資産は世界最大であり、今後も国際的な経済活動において重要な役割を果たしていくと考えられる